韓国の医療大麻合法化と実情|変わりゆく大麻事情
学ぶ
2021年10月21日

韓国の医療大麻合法化と実情|変わりゆく大麻事情

グアムやジャマイカ等、世界では続々と大麻を合法化する国が増えており、嗜好品としての効用のみならず、医療用途としても注目されています。そしてその流れは東アジアでも例外ではないことはご存じでしょうか。
今回は日本とも馴染み深い隣国である、韓国の大麻事情について解説します。歴史的な大麻合法化によって何が変わったのかを押さえていきましょう。

韓国の合法化は他国とは異なる

他国とは事情が異なる韓国の大麻合法化

大麻の合法化といえば、ある一定の量であれば所有と使用が法的に許可されて、誰でも喫煙できる状態をイメージする方がほとんどでしょう。

そして、そういった国では旅行者でも簡単に入手できる可能性があることから、大麻を目的とした旅行に繰り出してしまう方も少なくはありません。

しかし、こと韓国においてその認識は少々危険度が高く、場合によっては現地の法律に基づいて厳しく罰せられる可能性もゼロではないのです。

その理由として、実は韓国で合法とされているのは医療用途のみであり、尚且つそれは注射器で人体に投与するCBDの薬品が基本です。

したがって、一般的なイメージの楽しみ方は当然困難であり、そもそも入手自体も厳格な基準と専門機関の承認が必要とされているため、もし何かしらのルートで乾燥大麻を入手して、合法と思って街中で吸引すれば、その場で犯罪者として逮捕されることになるでしょう。

日本からのアクセスが容易で観光地としても大変魅力的であるだけに、まずは正しい大麻事情をして、しっかり危機管理意識を持つことが大切です。

韓国が合法化された経緯とは

韓国で大麻が合法化された経緯とは

ここではまず韓国の現状を把握するために、これまでの歴史や経緯を振り返っていきます。普段から観光に訪れている方や、今後旅行を検討している方は是非参考にして下さい。

日本よりも更に厳しい法規制

韓国における大麻の歴史はそれほど長いものではなく、その存在が特にクローズアップされていたのは、朴正煕が大統領であった1961~1979年です。

当時はドラッグ全般を西洋からの反社会的文化として取り扱うことで、自国民に薬物=タブーという価値観を定着させており、その流れは世代を重ねてもなお継承されていきました。

ちなみに韓国では、大麻の栽培や使用はもちろん所持に関しても5年以下の懲役または5千万ウォン(約500万円)以下の罰金が課せられることになり、合法化されている国で吸引した場合も問答無用で自国の法律が適用されます。

実際のところ日本の大麻取締法は「使用」を違法としておらず、(所持は違法なので実質的に変わりありませんが)罰金の額も200~300万円程度であることから、より厳格な法規制といえるでしょう。

合法化のきっかけとは

これまで韓国は「無薬物」を掲げる国として知られていましたが、2018年の法改正をもって医療用途に限り大麻を合法としています。

そして、同国にとってまさに歴史的ともいえるこの出来事のきっかけは、2015年1月に国会へ提出された「麻薬類管理法の改正法案」とされており、HIVや鬱疾患、ガン等に有効とされる大麻成分が含まれた医療品を韓国で処方できるようにするためのものでした。

当時は政府が大麻を容認することに対して、慎重な意見が多かったため可決には至らなかったものの、その内容は韓国医療に新たな選択肢をもたらすものであり、その後2017年には、医療用途合法化を求める「医療用大麻合法化運動本部」という市民団体が設立されるに至っています。

また、その時期から、特殊な疾患を持つ子を治療するために、CBDオイルを輸入した保護者が相次いで摘発されたことによって、従来の医療では効果が見られずに違法薬物に頼るしかなくなってしまった患者達の現状が知れ渡ることになったのです。

合法化の動きが政府でも本格的に

CBDオイルが持つ効用と、実際に必要としている国民の姿を目の当たりにしたことで、国会内でも再度合法化を推進する動きが強まりました。

そして、「共に民主党」の申昌賢(シン・チャンヒョン)議員を筆頭に、医療大麻合法化を目的とした麻薬類管理用の改正法案がもう一度提出されることになったのです。

また、2018年のこの頃は国際的に合法化の動きが強まっていたことに加えて「他に適切な治療法がないという患者達の切実な要望」という強い理由もあったことから、以下のような条件で実現される見通しとなりました。

  • 海外認可の大麻成分を含む医薬品に限定
  • 希少疾病用医薬品センターへの申請
  • 医師からの処方箋

このことから、CBDはてんかんや鬱、ガン治療に対する副作用の少ない新たな選択肢とされながらも、原則として患者の判断に基づいて使用できるものではなく、あくまでも医療機関と政府の許認可が必要となっています。

韓国の大麻合法化で押さえておきたいポイント

韓国の大麻合法化で押さえておきたいポイント

ここからは、韓国の大麻合法化について押さえておきたいポイントを解説していきます。実際のところ他国の内容とは少々質が異なるため、是非参考にして下さい。

乾燥大麻としては流通していない

まず押さえておきたいのは、韓国において処方される大麻は一般的にイメージされている乾燥大麻ではなく、トリップ効果を持たないCBDを抽出した薬品であり、接種方法も吸引ではなく注射となります。

したがって、ジャマイカやグアム、アメリカ等の運用とはベースが異なることを把握しておきましょう。

もし現地で「もう合法化してるから大丈夫」等と誘われて乾燥大麻を売りつけられてもそれは完全に嘘です。

そもそもがそこまで流通していない

一見すると大変有用性の高い医療大麻ですが、問題となるのはそのコストです。

現在韓国で処方されているものを仮に1年間利用すると、日本円にして約360万円に昇るとされており、保険を適用することもできません。

現地の大卒初任給が同程度であることを考えれば、誰でも手が出せる代物ではないといえるでしょう。

韓国では医療用途のCBDのみが合法化された

他国における合法化といえば、乾燥大麻としての販売や旅行者への解禁、自宅での栽培等ですが、こと韓国に関してはそういった形ではありません。

元来、薬物を強く抑え込んでいた国家が、国民からの切実な願いを汲んだ結果の動きであり、一般的に流通することはなく、極めて用途を限定した措置となっています。

また、大麻のトリップ効果はTHC(テトラヒドロカンナビノール)によって得られるものであることから、そもそもCBDではそうしたドラッグ的な利用方法ができないこともあわせて押さえておきましょう。

以上のことから、今後韓国へ出向く際には、大麻は依然として違法薬物であることを忘れずに、もし合法化を盾に誘われたとしても絶対に断るようにして下さい。