ベニテングタケで陶酔(トリップ)は可能なのか?毒キノコをナメると危険
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2021年9月2日

ベニテングタケで陶酔(トリップ)は可能なのか?毒キノコをナメると危険

陶酔効果(いわゆるトリップ)を引き起こす100%天然の植物といえば大麻が有名ですが、身近に生息しているキノコも忘れてはいけません。
もちろん松茸や椎茸は生で食べても目立った毒性はありませんが、ベニテングタケに含まれるイボテン酸はトリップを引き起こす成分とされており、遊び感覚で試す方も多くなっています。
そこで今回は、そんなベニテングタケのトリップ効果について解説していきます。
違法薬物ではないものの、誤って食べれば辛い中毒症状に悩まされることになるため、しっかり押さえておきましょう。

ベニテングタケのトリップは大麻とは違う

ベニテングタケのトリップ

まず結論として、大麻で言われるような精神作用・陶酔効果(いわゆるトリップ)を求めてベニテングタケを試すのはおすすめできません。

ベニテングタケの含有成分であるイボテン酸には、めまいや吐き気、腹痛といった身体異常を引き起こす効果があるため、ほとんどの場合感覚を感じる余裕などないほど辛い状態に陥ってしまいます。

一方、山林での採取は違法とされておらず、致死性の強い猛毒に関してはごく微量となっていることから、もし誤って食べてしまっても死亡するケースは稀です。

ただ、正しく処理すれば、味自体は松茸を超える美食ともされているため、興味のある方は後述する方法を参考にチャレンジしてみて下さい。

ベニテングタケとは

ベニテングタケ

ここからはまず、ベニテングタケの基本知識について確認していきましょう。

誤って生で食べれば強烈な中毒症状が待っていますが、肝心の味は他のキノコでは味わえないほど美味ともされているため、そのポイントに関しても詳しく解説していきます。

毒キノコらしい見た目

ベニテングタケ(紅天狗茸)はテングタケ属に分類されており、赤いかさに白い斑点が付着していることから、まさに絵に描いたような毒キノコとして知られています。

一方、初心者は猛毒のテングタケと見分けがつかないことも多く、「ベニテングタケと思って」食べてしまうと命の危険すらあるでしょう。

ちなみに分布しているエリアはロシアや北アメリカ、ヨーロッパ、そしてアジアと広く、寒冷地帯では幸福を呼ぶキノコとして親しまれる一面も持っています。

また、豪雨等で白い斑点が取れると、オムレツに合うタマゴタケのようにも見えてしまうため、キノコ狩りの際は特に注意して下さい。

ベニテングタケの含有成分

ベニテングタケに含まれているイボテン酸という毒素は、体内に吸収、あるいは自然環境の中でムッシモールに変化する特徴があり、トリップのようなめまいや吐き気、強い腹痛を引き起こす作用を持っています。

また、猛毒に分類されるアマトキシンも微量ながら存在するため、食べ続けてしまうと肝機能に重大な悪影響を及ぼすでしょう。

ただし、ベニテングタケの致死量は5kgという食べ切る方が難しい水準であることから、直接的な死亡原因になった事例は確認されていません。

他のキノコよりも美味しい

毒々しい見た目を持ったベニテングタケですが、含有成分のイボテン酸、そしてムッシモールはグルタミン酸*の約10倍もの旨味を持っているため、実際に食べてみると大変美味とされています。

ちなみにオイルでソテーすれば、舌全体に旨味自体がまとわりつくような味わい、そして生牡蠣を彷彿とさせるような口内で溶けていく感覚が楽しめるとされていることから、他のキノコとは一線を画した存在であることは間違いないでしょう。

ただし、その先にあるのは強烈な中毒症状であるため、無毒化しないで楽しむのは基本的におすすめできません。

*グルタミン酸とは、一般製品にも含まれているメジャーな旨味成分です。

ベニテングタケの中毒症状とは

先ほどはイボテン酸の症状のみにフォーカスして解説しましたが、ここからはよりリスクを把握するためにベニテングタケが持つ総合的な中毒症状を確認していきましょう。

  • 軽い幻覚

ベニテングタケを食べて目をつぶると軽い幻覚症状が表れるとされています。

  • 下痢と嘔吐

消化器官にも悪影響を及ぼすため、強烈な下痢と嘔吐に悩まされてしまうでしょう。

  • 酩酊状態

お酒のそれとは多少異なるようですが、酩酊しているようなふらつき、めまい、そして思考が働かない状態に陥るとされています。

ちなみにこれらは身体機能が完成されている成人に当てはまる症状であり、子供の場合は興奮や痙攣、酷いケースでは半日以上昏睡状態になる危険性があるようです。

ベニテングタケの処理方法

ベニテングタケの処理方法

ベニテングタケを一般的なキノコのように食べるには、毒素を抽出して無毒化しなくてはなりません。

一方、鍋とコンロさえあれば誰でも実践できることから、その美味とされる珍味を味わってみたい方のために主な調理方法をまとめます。

  • 水で洗う

まずは表面に付着している泥を取るために、水でよく洗いましょう。

この時、かさについている白い斑点も落ちてしまいますが、味に変化はありません。

  • 鍋で茹でる

綺麗なベニテングタケを鍋に入れて、20分程度茹でていきましょう。

ちなみに最初のうちはオレンジ色のダシがでてきますが、この中に有毒成分が含まれているため、極力素手で触らないように捨てましょう。

  • 2~3回繰り返す

茹で汁が無色になるまで2~3回繰り返し、完全に毒を抜きます。

この時、少しでも不安がある方は多めに行っても問題ありません。

  • 最後に水でもう一度洗う

ベニテングタケ自体から色素が抜けたら、無毒化は成功であるため、水でもう一度洗って、お好みの調理方法で食べていきましょう。

ちなみにバターソテーや天ぷら、塩で頂くのも美味とされています。

ベニテングタケでトリップした場合の対処法

ベニテングタケでトリップした場合の対処法

ここからは、無毒化されていないベニテングタケで中毒を起こした際の対象方法を見ていきましょう。

実際のところ成人であればほとんどの場合死亡事例はありませんので、その点に関しては安心して下さい。

ベニテングタケを吐き出す

ベニテングタケが持つ中毒症状の1つに強烈な吐き気がありますが、改善するにはそのまま胃の内容物を全て排出するのが効果的です。

また、固形物がなくなっても成分自体は残留している可能性もあるため、水やお茶を飲んで自発的に嘔吐すれば、比較的早い段階で症状が緩和されるでしょう。

数時間程度横になる

嘔吐ができない体質の方は、そのまま横になって体から毒素が抜けるのを待った方が良いでしょう。

実際のところ、テングタケのような命に関わる猛毒は微量であるため、しばらく中毒症状に我慢していればいずれ改善する可能性は高くなっています。

ベニテングタケには大麻のような強い陶酔効果(トリップ効果)はない

ベニテングタケの陶酔効果(トリップ)は大麻とは違う

ベニテングタケは確かに幻覚作用もありますが、比較的強くはなくボンヤリと感じる程度であり、むしろ腹痛やめまいに苦しむケースがほとんどといえるでしょう。

また、致死性こそ低くなっていますが、誤って子供が食べてしまった場合は昏睡状態に陥ってしまう可能性もあるため、安易にそのまま服用するのは決しておすすめできません。

一方、無毒化さえすれば大変美味な食品となるため、もし入手した方はソテーや天ぷら、塩焼き等で芳醇な味わいを楽しんでみて下さい。